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交響曲 第1番 ニ長調 ≪巨人≫

作曲:1884〜88年 その後何度かの改定を加えている
初演:1889年11月、ブダペストでマーラー自身の手によって行われた
出版:1898年、ウィーンのヴァインベルガー社

実際にはこの曲の前にマーラーは交響曲を作曲しているが、それは未完成のままに作曲者自身の手で破棄されている。この曲も初演のときには交響詩として扱われていた。

同じ時期に作曲された歌曲「さすらう若人の歌」と、共通のモチーフを持っており、とても密接な関係にある。「さすらう若人の歌」では失恋による青年の苦悩がテーマだったが、この曲では<朝の素朴な生きる喜びに始まり、舞曲の楽しみや死の告別があって、人生に絶望した人間の内面に踏み込んでゆき、そして心を解き放ち開放へと到達する>というアウトラインがベースになっている。

いたるところにワーグナー(ジークフリート/森のささやき)や、ベートーベン(交響曲第6番/田園)の影響が強く出ている。この曲の完成時、ブラームスは4曲の交響曲を発表していたし、ブルックナーは最後の9曲目の交響曲をほとんど完成していた。そんな時代の作品である。




第1楽章 「果てしなき春と青春の日々」

「ゆるやかに重々しく」と指定された序奏(第1の動機)で始まる。
これは明け方の自然の目覚めを表している。

 
第1の動機
 



その後カッコウの鳴き声を模した4度の音程が執拗に繰り返される。
いわゆる「カッコウの動機」はその後も全楽章を通して現れ、曲全体をみごとに統一する。
続いて重々しい低音弦が第2の動機を刻む。

 
第2の動機
 


そして「第1主題」が登場。
このメロディは「さすらう若人の歌」の第2曲と同じものである。

 第1主題
 


曲全体は3部形式によっている。
大いに盛り上がり頂点に昇りきって提示部が終了。
展開部が始まり、そのまま再現部へと移行する。
クライマックで大いに盛り上ると、最後は「カッコウの動機」の高らかな響き。

第2楽章 「帆に風をはらんで」

始まりは8度飛躍の舞曲。 それが4度を用いた旋律を加えて輪郭を呈するようになる。
これらはオーストリア山岳地方の雰囲気を取り入れたものといわれている。

 8度の動機
 

 
4度の動機
 


ゆったりとした雰囲気のまま第2部へと移っていく。
そして第1部の再現となる短い第3部で曲は終わる。

第3楽章 「狩人の葬式」

青春の日々と失恋による苦悩がこの楽章では特に表れているようである。
出だしは
のフランス民謡の旋律を用いた重苦しい葬送の歌

 フランス民謡を用いた旋律
 


 オーボエを加えたもの
 



メランコリックな雰囲気の展開があり、「さすらう若人の歌」第4曲と共通の明るい旋律が流れる。

 「さすらう若人の歌」第4曲の旋律(5:10)
 

最後はフランス民謡の旋律が弱々しく流れて、そのまま次の楽章へと続く。

第4楽章 「地獄から天国へ」

この表題はダンテやホフマンの世紀末の詩に基づいたもの。
激しい感情がそのまま表現され、約3分半に渡って繰り広げられる。

 第1主題
 


それが落ち着くとゆったりした第2主題で第2部が始まる。

 第2主題
 


途中、これまでの楽章からの断片が次々と現れて、それが全ての楽章を通して1つの流れを維持している。
第3部では第1主題が少し出てくるものの、すぐに自然の力の動機にとって代わられ、最後華々しいフィナーレとなる。


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