マーラーの歌曲
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歌曲集として区分けされているマーラーの作品集は、全部で5つある。マーラーというとまず交響曲を連想させられるが、生涯に交響曲と歌曲の2つのジャンル(若干の例外を除いて)しか残さなかった作家であり、歌曲にも魅力的な作品は多くある。
ジャンルとして分けられてはいるものの、そのまま交響曲へ転用されたいくつかの歌曲をみると、逆に「大地の歌」などは歌曲に入れてしまってもおかしくないくらいである。それくらいこの2つのジャンルは密接に関係していて、マーラー自身に厳密な区出分けは来ていなかったと思われる。
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若き日の歌(歌曲集)
全14曲 演奏時間35分
マーラーは学生時代に多くのピアノ伴奏曲を作曲しているが、それらの大半が破棄されたか未完成に終わっている。この曲集も完成から出版までずいぶん期間があり、「第1交響曲」出版の4年後にようやく3冊にわけて発表された。
作曲年代に開きがあり、古典的な印象のある様々な曲が収められている。後の作品に比べれば明らかに地味な印象はあるが、マーラーの本質的な要素は随所に散りばめられている。
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さすらう若人の歌
全4曲 演奏時間17分
オーケストラ伴奏譜とピアノ伴奏譜があるが、どちらが先に書かれたかははっきりしていない。マーラー自身は詩は自分で書いたといっているが、民話集≪子供の不思議な角笛≫を作り変えたと思われる部分が多い。とはいえ内容は自伝的で、歌手ヨハンナ・リヒターとの失恋体験がそのまま表現されている。
前作からは格段の進歩がみられ、内容はとても充実している。作曲時期が近いこともあるが、モチーフのいくつかは「交響曲第1番」と共通している。
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子供の不思議な角笛
全14曲(版によって異なる) 演奏時間65分
同名の民話集から歌詞を採った12曲を収めて、1899年に出版された。後にこの中の2曲を交響曲に転用し、2曲を新たに作曲したことから、様々な版が存在する。CDで聴こうとしたときに決定版が存在しなくてやっかいなのは、これが理由。
マーラーの代表的歌曲集であり、聴き応えが一番あるのはこの作品集だろう。音楽だけでなく歌詞をみても、ひねりがきいていて味のあるものが多い。
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亡き子をしのぶ歌
全5曲 演奏時間25分
充実した時期の作品で、同じ頃に第5〜7番の交響曲が書かれている。「交響曲第6番」とともにマーラー家を襲った≪悲劇的≫な出来事を予告している作品。結婚して子供が生まれた時期に、このようなテーマを選ぶところがマーラーらしいというのか…
曲は円熟味を増し、ある意味渋さを感じさせる。これと次の曲は玄人好みの作品ということになるのだろうか。
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リュッケルトの詩による5つの歌曲
全5曲 演奏時間20分
この歌曲集は詩人リュッケルトの詩をもとに作曲された曲がたまたま余ったのでくくって出版した、というニュアンスが強い。
さすがに残り物だけに、他の歌曲集に1歩劣るといった感じは否めない。それでも1曲目は間違いなく秀逸だし、異国風5音階の使用、大胆な転調などと、聴きどころはそれなりに多い。
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