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交響曲 第9番 ニ長調

作曲:1909〜1910年 
初演:1912年6月、ウィーンでブルーノ・ワルターの指揮によって行われた
出版:1913年、ウィーンのウニヴェルザール社


構成は4つの楽章からなり純器楽のみで編成されているが、伝統的交響曲と異なり最初と最後の楽章が緩やかな曲(アダージェット)となっている。巧妙な対位法の使用、和声の拡大など、技法的にもこれまでの交響曲をより進化させ、ひとつの限界点にまで達したといえる。

第1楽章にベートーベンの「告別ソナタ」、第4楽章では「亡き子を偲ぶ歌」の第4曲の引用があり、<死>の観念によって曲全体が覆われている。

作曲はニューヨーク・フィルでの多忙な演奏活動の合間を縫って行われた。休暇を待つようなゆとりはもはやなかったのかもしれないが、無理な仕事の進め方が結果的に死を早めてしまったともとれる。いずれにせよ、次の「第10交響曲」は未完成であり、この曲がマーラーにとっての<白鳥>の歌となった。




第1楽章

短い序奏で5つの冒頭動機が提示される。そして第2ヴァイオリンによる第1主題が提示される。この主題が局全体の根幹を成している。

 第1主題
 



曲はニ短調になり、第1ヴァイオリンによって第2主題が奏でられる。

 
第2主題
 

 

再びニ長調に戻り、第1主題が展開風に扱われ、さらに第2主題の展開が繰り広げられた後で、ヴァイオリンと木管による第3主題が登場。

 第3主題
 


展開部はこれまでの主題と関連した新しいモティーフによって扱われ、変ホ長調から嬰へ短調へと調性も拡大される。

コーダではこれまでの残骸がかき集められたように、消え入るように並べられる。この部分の手稿には「さようなら、さようなら」という書き込みがあった。

第2楽章

「ゆるやかなレントラー風のテンポで歩くように、いくぶん粗野に」という指示を持ち、一種のスケルツォに相当する楽章。
曲は3種のレントラー風の主要旋律を持つ。

 第1レントラー主要旋律
 


 第2レントラー主要旋律
 


 第3レントラー主要旋律
 



3つの主要主題の紹介が終わると、曲は第2部へと進む。ここでは第2、第3レントラーが扱われ、まず第2レントラーの旋律が6つの主題で展開される。それが終わると第2レントラーの提示がきて、第3レントラーを対位法として伴い、5つの変奏形で展開する。

続いて第3部となり、まず第1レントラーの展開が行われる。このように第2楽章全体は、3つのレントラー主題が順不同で繰り返し登場し、最後はあっさりとした結末で幕を閉じる。

第3楽章

ロンドがフィナーレではなく第3楽章に置かれ、「きわめて反抗的に」という指示が記されている。
曲はまず主題の断片による序奏があってから、ロンド主題が出る。

 ロンド主題
 


途中で突然、「第3交響曲」第1楽章の「パンの主題」がホルンで吹奏される。

 パンの主題
 


第4楽章


圧巻のフィナーレ。普通なら中間楽章にくるべきアダージョがくる先例としては、チャイコフスキーの「第6交響曲≪悲愴≫」がある。

全体が死の予感で満ち溢れているようなこの楽章は、前の楽章から導かれたロンド主題を中心にゆったりと進んでゆく。

 ロンド主題
 



ヴァイオリンのきしむような叫びで緊張感は全ての交響曲の頂点に達し、それが終わると消え入るようなコーダが展開されて曲は終焉を迎える。


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