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交響曲 第5番 嬰ハ短調

作曲:1901〜02年  
初演:1904年10月、ケルンでマーラー自身の指揮によって行われた
出版:1904年、ライプツゥイヒのペタース社


全体は5楽章からなるが、第1楽章と第2楽章に共通の素材を用いているように、大きく第1部(第1、第2楽章)、第2部(第3楽章)、第3部(第4、第5楽章)の3部に分けることが出来る。

楽曲のあちこちでベートーベン、ワーグナー、ショパン、ブラームス、シューマンなどの諸作品や、自己の「第4交響曲」などから流用したと思われる旋律が登場する。18〜19世紀の独創性を重んじる価値基準では考えられないわけだか、むしろ高尚な芸術への批判のようでもある。

葬送行進曲に始まって、歓喜の叫びに終わる流れは、「苦悩を突き抜け歓喜に至る」というベートーベン的な、闘争のドラマが盛り込まれているようでもある。




第1楽章 

1楽章と2楽章は共通の素材をを用いることによって、開始楽章を2つ並べたように構成されている。
曲はベートーベンの「第5交響曲」のパロディでもあるかのような、トランペットの葬送を告げるファンファーレで始まるが、ここでは「正確な歩みで、厳格に、葬列のように」と指示されている。

 ファンファーレ
 

落ち着いたところで悲しみの主題がゆったりと流れる。

 悲しみの主題
 

ファンファーレと主題は幾度も展開され、途中「亡き子をしのぶ歌」から「いま太陽は明るく昇る」の引用なども行われる。

 「いま太陽は明るく昇る」
 

悲しみの頂点で葬送のリズム
が来たあと、トランペットと大太鼓が残って曲は静かに結ばれる。

第2楽章 

「嵐のように激して、より大きな激しさで」と指示された序奏と小刻みな第1主題が来てから、第2主題が単調の旋律でゆったりによりチェロで奏でられる。

 
第1主題
 


 
第2主題
 


金管のコラールはこの楽章と最後の楽章で登場するが、こちらでは確立されないままに消えてゆく。第5楽章で主題と関連を持って確立されることになる伏線が、ここで張られているわけだ。

第3楽章

温かみのあるホルンの動機で始まる、マーラーが初めて正式に<スケルツオ>と記した長大な楽章。

 ホルンの動機
 


第4楽章

過度にセンチメンタルな性格を持つこのアダージョは、マーラーのアルマに宛てた愛の証だと云われている。また、「リュッケルトによる5つの歌」の「私はこの世に忘れられた」とも旋律的に関連がある。

全体は3部形式からなる。

第1部はハープとヴァイオリンの愛の二重奏。

 第1部の主題
 


第2部ではハープは加わらずに、ヴァイオリンが悲しげな主題を奏でる。

 第2部の主題
 


第1部を簡潔にした第3部では長調に戻り、静かに楽章を締めくくる。

第5楽章

第4楽章の恋愛を経て、歓喜に至った心境を表すかのような明るい終楽章。
まずいくつかの楽器が主題の断奏を奏で、ホルンで主題が現れる。

 主題
 


続いてバッハ風の副主題。

 第1副主題
 


主題はフーガで何度も転用され、強烈なクライマックスで曲は幕を下ろす。


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