解説 リストが39歳のときに初めてオルガン用に書いた作品。彼のもうひとつの傑作≪バッハの名による前奏曲とフーガ≫と並んで、19世紀オルガンレパートリーの中でも、もっとも重要で記念碑的な作品のひとつとされている。リストはマイヤベーアのオペラ「預言者」を聞いてとても感動した。リストはこの旋律を少し変形した主題によって、オルガン曲を書いたのである。
曲は3つの部分に分かれるが続けて演奏される。第1部:幻想曲(前半)は、暗く陰鬱な音で荘厳に開始され、やがてクライマックスへと高揚する。 第2部:幻想曲(後半)はアダージョで、静かな光の音楽である。 第3部フーガはすさまじい半音階の嵐で始まる。付点リズムのフーガの主題は、ペダル演奏の大変な難所で、高度の技巧を必要とする。最後は全てが満たされたかのように、ハ長調の和音で満たされる。 この曲は単一の主題の変容で作られているという点では、まさにオルガン版≪ピアノ・ソナタ ロ短調≫ともいうべき、大規模で交響的な作品である。
トーマス・トロッター(オルガン)
録音1992年メルゼブルグ大聖堂