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ベルリオーズ:幻想交響曲 Symphonie Fantastique Ops 14 

解説

リストの最初期の変奏曲。ベルリオーズのあまり演奏の機会が与えられない作品を、ピアノ独奏用に編曲することで、当時としては桁外れに多くの人々に知らしめる役割を果たした。

それと同時に、「幻想交響曲」がオーケストラで演奏されたあと、ピアノで「断頭台への行進」を弾いたリストはオーケストラ以上の賞賛を浴びたというエピソードも伝えられている。この作品はまぎれもなくリスト本人によるものだろうが、当時編曲された多くの作品はリストの取り巻き音楽家たちによるものだったようである。

第4楽章「断頭台への行進」は1864年から65年にかけて編曲されなおされた。

作品評

変奏曲が本来負っていた「オリジナルの代用品」としての役割は、今日では完全に消滅している。もともとオーケストラを前提にしている作品からの編曲では、十分にピアノ音楽としての満足度が得られないのは明らかだ。オーケストラの響きをいかに鍵盤の上に移し変えることが出来るかを期待するのであれば、結果はどうしても満足しきれないものになってしまう。

「野の風景」で遠くから聞こえてくるようなオーボエ、4個のティンパニーで表現される遠雷のとどろき。これらはまさにピアノ音楽の領域外のものである。人間の指は合わせても10本であり、オーケストラのスコアに示された音を鍵盤で奏でるにはおのずと限界がある。

ピアノの変奏によるハンディはいたるところに見られるが、しかしこれはある時代のみが作り出した音楽享受の方策だったのである。各種の楽器が入り混じった音色を単独楽器の演奏に期待するよりも、むしろ原曲をいかにアレンジしているかを楽しむべきであろう。そうすると編曲によって原曲のオーケストラ版では聞き逃していたような曲のモティーフや構造を、あらためて確認して驚かされることも少なくない。

本作では最後のコーダに向かって劇的なドラマを盛り上げていく「夢と情熱」、鍵盤が舞うウィンナ・ワルツの「舞踏会」、「ワルプルギスの夜の夢」をさまよう魔女のロンドなど、ピアニスティックな魅力にもこと欠かない部分を多く持った、十分に興奮を味わえる編曲となっている。

愛聴盤

ニコライ・ペトロフ(ピアノ)

録音1990年

第4楽章は後から改定されたヴァージョン。

ニコライは1943年4月、モスクワの名門音楽一家の生まれ。幼少の頃から祖母の下でピアノを学んだ。6歳でモスクわの音楽付属の中学校に入学。1962年にアメリカテキサス州の国際ピアノコンクールで第2位。その後確実にキャリアを積み上げていった。

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