解説

リヒャルト・ワーグナーの生涯と作品に、リストが与えた影響は計り知れない。残念ながらワーグナーの音楽に対するリストの敬愛も後年は報いられることがなかったが、ワーグナーの死は彼に大きな打撃を与え、数多くの作品に影を落とした。

この作品は1883年にワーグナーの死を知らされた直後に書かれた。リスト後期の多くの作品同様、簡潔であると同時に豊かである。冒頭部は深い鐘の音に始まり、勝ち誇るような全音階的和音へと導かれ、次第に死の不協和音へと高まってゆく。そして闇へと一瞬降り立ったあと、言葉もない静寂が訪れる。