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交響曲 第8番 変ホ長調 ≪千人の交響曲≫

作曲:1906年
初演:1910年9月、ミュンヘンでマーラー自身の指揮によって行われた


大編成によるこの曲は千人近い演奏者を必要とすることから≪千人の交響曲≫と呼ばれる。事実ミュンヘンの初演の時、声楽陣は858名、管弦楽は171名であった。

9世紀初頭のラテン語の精霊降臨祭の讃歌と、ゲーテのドイツ語の「ファウスト第2部」最終場面が併置されており、マーラーによれば「大宇宙が響きはじめる世界、偉大なる歓喜と栄光をたたえた曲」である。

テキストの選定やスケッチなどの準備的な作業を除けば、この曲の作曲は約8週間というマーラーとしては例外的に短い期間で行われた。これまでの悲観的な題材はここには存在しない。あくまでも徹底して永遠の讃歌が歌われている。




第1部 「きたれ、創造主なる精霊よ」 

580小節のうち500小節で歌われているのにテクストは全8節しかなく、大胆な行や詩節の反復がなされている。原詩に対するこだわりはなく、マーラー自身による改定もあちこちで行われた。

曲はまず合唱が第1主題で「きたれ、創造主なる精霊よ」と歌いだす。

 
第1主題(0:01)
 



第1主題の経過がしずまると、第1ソプラノが「なんじのつくりし魂を」と静かに歌いだす。これに独唱者たちが加わり、合唱も参加する。

 
第2主題(1:24)
 

 

提示部は短い第1主題の結尾があってから、それが盛り上がって終わる。

展開部は管弦楽だけで始まり、第1主題がたくみに応用される。ついで独唱が「なんじの炎よ、我らを燃やせ、なんじの愛よ、我が胸にながれよ」とうたってゆく。

再現部では再びが第1主題で「きたれ、創造主なる精霊よ」と歌われ、管弦楽だけで曲は結尾に導かれる。

コーダは児童合唱から始まる動機の拡大、展開で、最後は壮大な音響宇宙を築いて曲がしめくくられる。この盛り上がりはマーラーの全交響曲のなかでも、最大級のものである。

第2部 「ファウスト第2部」最終場 

ゲーテのテキストが、一部省略された他はほとんどそのまま用いられている。全体は見方にもよるが、大きく3部に分けることが出来る。

まず低音弦と木管が主要動機を提示する。管弦楽のみのとても静かなはじまりで、やがて激しさをましてくる。ここでは常に主要動機が使われる。

 主要動機(0:01)
 


執拗な主要動機の反復に、合唱が控えめに参加してくる。 
そしてバリトンが主題をゆったりと歌いだし、ついでバスが加わり、テンポが速まって神を讃えていく。

 主題(12:00)
 


児童合唱が聖なる子供の歌を歌い、様々な展開があってからテノールの独唱がマリアを讃え、ハープとピアノのアルペジオで第1部が終わる。ハープはそのまま第2部へとつながってゆく。

第2部はゆったりとしたヴァイオリンの奏でる主題ではじまる。

 
ヴァイオリンの主題
 


やがてこの主題に基づいて第2ソプラノの、「罪を後悔するグレートヒェン」の歌が始まる。それに続いて管弦楽が主題を展開し、児童合唱が歌いだす。

第3部はやはりマリアを讃えるテノールの歌で始まり、合唱がそれに伴奏する。
「神秘の合唱」が静かに歌われ、やがて盛り上がり合唱とオーケストラが入って大きなクライマックスを築く。最後は金管が第1部の第1主題を高らかに吹奏すして「精霊」と「マリア(永遠の女性)」、すなわち第1部と第2部が直接的に結ばれ、全曲の幕が閉じられる。


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