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交響曲 第6番 イ短調 ≪悲劇的≫

作曲:1903〜05年 
初演:1906年10月、エッセンでマーラー自身の指揮によって行われた
出版:1906年、ライプツゥイヒのカーント社


この曲の作曲中、マーラーは生涯のなかでも、特に充実した幸福な時期にあった。それだからこそ、むしろこうした≪悲劇的≫な曲を書いたとみることも出来る。マーラー自身、もしほんとうに≪悲劇的≫な状況にあったら、このような曲は書けなかったと語っている。

第1楽章では妻アルマを、第3楽章では2人の子供を描き、最後は自分自身の破滅を曲の中で表現している。

この曲の完成直後にマーラー家で起こる不幸を先取りしていることや、作曲時期が近い点で、「亡き子をしのぶ歌」のいくつかの曲と共通している。もっともこれにかんしては偶然かもしれないが。



第1楽章 

とてもダイナミックで劇的なマーチの序奏で始まり、続いて暗い行進曲風の第1主題が現れる。この刻みつけるようなリズムが、楽曲全体を支配している。

 第1主題
 



妻アルマを描写した優美な第2主題。これは生への願望の象徴でもある。

 
第2主題(アルマ)
 


展開部は第1主題の反復。それに第2主題が絡む。
頂点を迎えたところで第1主題の変形が出て、再現部へと移る。

14:00あたりで「交響曲第2番」第1楽章の第2主題を思わせるメロディーが出てくる。
コーダでは急激な変化をしながらアルマの第2主題で盛り上がり、それが推移動機を交えながら高らかに歌い上げて、生命の束の間の勝利で終わる。

第2楽章

第1楽章が継続しているかのような、不気味で怪異的なティンパニーの連打を軸にしたリズムの主要動機。この楽章はスケルツォであり、材料も第1楽章と密接に関連している。

 
主要動機
 



冒頭の主題が再現されたあとにでてくるトリオは、≪砂場の上を歩き回る2人の子供たちの情景≫を描いたもの。まるでマーラーの子供たちの運命を暗示しているようである。

 
トリオ(2人の子供)
 


第3楽章

優雅で印象的なメロディの第1主題ではじまり、この主題を展開形したマーラー独特の美しいメロディが加わて、曲はゆったりと流れてゆく。

 
第1主題
 



中間部のでは家畜の鈴の音に加え、ハープやセレスタも動員されて盛り上がりを見せる。
常に主題を中心に曲は展開してゆき、短い中間部の後に第1部の主要音楽を全て再現した第3部がきて、曲は大きなクライマックスを迎える。

第4楽章

ヴァイオリンが奏でる主要旋律の序奏で始まる。これに続いて様々な動機が流れて曲が彩られる。

 序奏
 



長い序奏の後、主部に入り第1主題が提示され、第2主題が出て展開を重ねながら≪悲劇的≫結末に向かって進行する。様々な楽器が使われ、ガラガラも導入される。

 
第1主題
 


 第2主題
 



最後のハンマーの打撃はあたかもマーラー自身の息の根を止めるかのようであり、その後重々しく沈んだような結尾が流れて、曲は終わる。


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