第1曲<僕の歌をのぞき見しないで>
作っている最中の曲をのぞき見される、一種の後ろめたさを歌ったもの。
5曲のなかでは最初に書かれた。
‘僕の歌をのぞき見しないで!悪事の現場を押さえられたみたいだ
作品が出来る過程に立ち入られるのは、僕自身にだって許さないでしょう’
詩の内容は恋人アルマとのやりとりのようにも聞こえる。それが選択された理由かもしれない。
‘菩提樹の香りはなんて愛らしいんだろう
この菩提樹の若枝はキミがやさしく折り取ったものだ’
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第2曲<ほのかな香りを>
恋人から贈った菩提樹の香りによせて、愛の想いを歌う抒情詩。
‘僕は柔らかな香りをかいだ
愛らしい手が贈ってくれた菩提樹が部屋におかれたのだ’
第2節のはじめにピアノが声を助けて美しい旋律を歌う。この旋律は後にも登場し、静かなアルペジオで曲は終わる。
‘菩提樹の香りの中に、
僕はひそかにやさしい愛の香りをかぐんだ’
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第3曲<私はこの世に忘れられて>
この曲集の中では名曲として知られる曲。詩の内容はどこかマーラーの心に触れているよう。
‘私はこの世から姿を消してしまった。
かつてあれ程に時間を過ごしたところから’
朗読風の旋律が淡々と歌われる。夢見るような美しい音楽で、「第5交響曲」の≪アダージェット≫や「亡き子をしのぶ歌」の≪いま私には分かるのだ≫と関連がある。
‘でも私は生きている、1人私の王国のなかで
私の夢のなかで、私の夢のなかで’
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第4曲<真夜中に>
真夜中の心中の苦悩が切々と歌われ、最後には全てを神にゆだねようという悟りにいたる内容。
この曲の主要モチーフは、「大地の歌」2楽章の全奏でオーボエの吹く印象的なモチーフにとてもよく似ている。
‘真夜中に僕は目を覚まして天を仰いだ
群れをなす星のどれひとつとして、
私に微笑んではくれなかった’
最後の節ではしだいに力を増してゆき、声は2倍に伸びて強烈な神への賛歌となる。
‘真夜中に僕は自分の力を神にゆだねた
主よ、地上の生と死とを
あなたは常にみはっておられる’
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第5曲<美しさゆえに愛するなら>
情熱的なラブソング。
‘私が美しいから愛するというなら、愛してくださらなくてかまいません
太陽を愛せばいいのです。黄金の神をもっているのだから’
このような詩の内容が、20歳近く若いアルマと結婚したばかりのマーラーを刺激したのかもしれない。
‘愛のゆえに愛するのでしたら、どうか私を愛してちょうだい
いつまでも愛して。私はアナタを永久に愛しましから’
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