リスト狂 リストの生涯 謎多き天才少年 ロマン主義アーティストとの出会い
ダグー伯爵夫人との恋愛 ピアニストとしての黄金時代 ワイマール宮廷楽長時代 交響詩の創案
挫折・カロリーヌとの結婚問題 宗教と教会音楽 晩年の活動 リストの最晩年・死ぬまでの6年間
謎多き天才少年 (1811-1827年)
〈LIST〉?、それとも〈LIST〉? 

フランツ・リストの父、アーダム・リストは、ハンガリーの大領地を所有していた公爵家に仕えていた。チェロ奏者として演奏会に出席したりする程度の音楽はたしなんでいたが、職業音楽家ではなかった。1810年にマリア・アンナ・ラーがーと結婚、翌年1811年にフランツが生まれている。

リストの家計はもともと〈LIST〉と書いていたが、これだと「リシュト」と発音されてしまう。それでハンガリーでもただしく発音されるようにアーダムが
〈Z〉を挿入するようにしたといわれているが、当時の記録はあまり資料が残っていないので、正確なところは分かっていない。

すくなくとも、フランツ・リストの出生証明には、まだ
〈Z〉なしの〈LIST〉と書かれている。
12歳の頃のリスト

リストの子供時代に関しては、ほとんどの資料が失われてしまっている。リストが貴族の家系だったという説もあるが、これは証明されていない。祖先のほとんどは農家か職人だったともいわれ、リスト自身は自分の家系をあまり評価していなかったようだ。
ジプシーの血筋?

リストは時々、
「ジプシーの血が自分の中を流れている」と語っていた。

これはまったく有り得ない話

であり、リストが自分をそのようにアピールしたかったための狂言と思われる。演奏旅行に明け暮れた彼の暮らしとぴったりしてはいるのだが・・・。

リストは子供のとき、ジプシーが音楽を奏でるのを、とても熱中して聞いていたという。しかしそういったエピソードは、彼のロマン主義的イメージを強調するために、リスト本人か、もしくは彼の公式の伝記作家となったリナ・ラーマンによるものだと考えられる。
死からの復活?

1〜2歳の頃に種痘にかかったリストは、それから神経症と発熱を交互に繰り返す闘病のため、生死をさまようことになる。一度は本当に死んだと両親が勘違いして、棺おけまで作らせている。

これもリストを神格化したエピソードとなり得るが、この気がかりな状態は6歳の頃まで続いている。6歳になるとリストは一度聞いたピアノ協奏曲の主題を口ずさむなど、天才の片鱗を見せ始め、ピアノレッスンを父から受けるようになった。
子供の頃から神秘主義者?

何人かの伝記作家が、リストのことを半ばメフィスト(悪魔)、半ばフランシスコ聖道士(聖人)、またはドン・ファン(女たらし)と述べている。あくまでもイメージでしかないが、壮年になってからのめり込む宗教への関心は、すでに少年時代からあったのではないかという意見が多い。

リストの両親はカソリックで、教会のしきたりを重んじていた。神の摂理と信仰はそのまま息子にも受け継がれたわけだ。

「夕暮れの教会の鐘が鳴る頃に、リスト少年の両手からは遊び道具が転がり落ち、唇からは祈りの言葉がこぼれた。日曜日には教会へ向かい、聖なる儀式の中で彼の魂を奇跡の光が取り巻き、ささやかな音楽が彼の心を打ち振るわせた」

このような神格化した伝記の伝え方を差し引いても、リストが幼い頃から宗教と身近に接していたのは確実であり、神秘主義に関心があった可能性は高い。
少年時代の生涯にわたる人格形成

リストの生涯のほとんどは、意識化からくる初年時代への反発だったのではないだろうか?彼の両親が大した家系の出ではないことに対する抵抗、まわりの小市民的な雰囲気や考え方に対する抵抗、家庭の安らかなぬるま湯の生活に対する抵抗・・・そして節約の美徳に対しての抵抗。

リストは生涯にわたって貴族を偏愛した


そして浴びるように与えられた勲章に対して無邪気に愛着を示し、社交界の派手な生活を好み、浪費癖は生涯収まらなかった。

これらはすべて、少年時代に動機が芽生えていたと想像できる。ただし、偶発的な資料の大発見がされなければ、それが具体的にどのようなものであったのかは、永久に謎のままとなってしまうであろう。
カロリーヌ・ドゥ・サン=クリック伯爵令嬢との恋愛

様々なアーティストたちとの出会いに刺激を受けるのとは別に、
リストはピアノ教師として活躍しながら、カロリーヌ伯爵令嬢と恋に落ちている。しかし彼女の父親が社会的身分の低い音楽家との恋愛を好まず、リストを出入り禁止にしてしまう。

幼い頃から天才としてちやほやされてきた彼にとって、ヨーロッパの片田舎に生まれた自分の身分を嫌が応にも痛感させられることとなった。ちなみに彼女は、後年リストと結婚するカロリーヌとは別人である。
HOME ピアノ楽曲 管弦楽曲 歌曲、宗教曲 リストの生涯 リンク

inserted by FC2 system